交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
クーラーの効きが良くて少し肌寒いから、ホッとするならあたたかい飲み物がいいだろう。
腰を屈めて彼女の顔を覗き込む。
ところが――。
「私、ほかに好きな人がいるの」
マリッジブルーというのは希望的観測に過ぎないと思い知らされた。
つけまつげを付けた大きな瞳が力強く訴える。予想とはまったく別物。事件と言ってもいいほどの事態が勃発した。
(新郎以外に好きな人が……いる?)
茉莉花は言葉を失くし、戸惑いいっぱいに結愛を見つめた。
でも今思えば、その予兆がなかったとは言い難い。打ち合わせをしているときから彼女はどことなく心ここにあらずで、新郎とふたりでサロンを訪れたのは初回の一度きり。衣装合わせも別々に訪れ、互いの意見も聞かずに決定していた。
新郎はスーパーゼネコンの御曹司。忙しいためなかなか時間が取れないらしいとブライダルプランナーから聞いていたため、さして気にしなかった茉莉花にも責任がある。あまり突っ込んで聞くのもどうかと考え、そのまま進めてしまった。