交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
黙り込んだ彼女に優しい眼差しで問いかける。すると結愛は振り返り、茉莉花の腕に突然すがりついた。
いったい何事かと身構える。
「あ、あの、荒牧様……?」
「伏見さん、私、あの人とは結婚したくないの!」
突然の告白に目が点になる。
彼女より五歳年上の花婿のヘアメイクはひと足先に終わり、式はもう目前。結婚したくないとは尋常ではない。
これまで何人もの花嫁にヘアメイクを施し、いろんな結婚式に立ち会ったが、直前に結婚したくないと訴えるパターンは初めてだった。
当然ながらいろんなカップルがいて、打ち合わせしていく中でキャンセルや式の日程が延びた経験はある。しかし当日、それもヘアメイクまで完成し、あとはドレスに着替えるだけの段階になってというのはない。
「どうされたんですか?」
ひとまず結愛の肩に手を置いて落ち着かせようと試みる。マリッジブルーで気持ちが不安定になっているだけかもしれない。リラックスすれば違うだろう。
「なにかお飲み物でも用意してもらいましょうか」