交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました

もしもそのときに彼女の迷いに気づいていれば、こんな事態に発展しなかったかもしれない。五年もの間、いろんなカップルに接してきたくせに、いったいどこを見ていたのかと情けなくなる。

その傲りが今、自分に跳ね返ってきたのだ。


「……荒牧様はどうされたいのですか?」
「だから結婚したくないの!」
「ですが、お式はもう間もなく――」
「そんなのわかってる。だから今しかないって」


結愛は切実な表情をして茉莉花の腕を揺すった。

(それならどうしてもっと早く相談してくれなかったの……!)

つい憤るが、そう考えるのは茉莉花が当事者ではないからだろう。彼女はこのときを迎えるまで悩み、激しく葛藤していただろうから。

でもここは日本を遠く離れたハワイ。招待客も大勢集まっている。今さら結婚式を取りやめるなんて無茶な話だ。


「やっぱり政略結婚なんて無理よ」
「……政略結婚」


結愛が放った言葉を茉莉花が繰り返す。
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