交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました

「観月様がお待ちになっているとメモでも入れてみましょうか」
「いえ、その必要はありません。このまま待たせていただきます」


約束していたとはいえ、仕事を途中で放り出させるわけにはいかない。なにより、彼女が仕事する姿を眺めるのを楽しんでいる自分がいた。


「そうですか? では、もうしばらくお待ちくださいませ。なにかございましたら、遠慮なくお声がけしてください」


美春は人の好い空気を醸し出しながら、カウンターのほうへ戻っていく。その背中を見送ってから、吉鷹は再び茉莉花に目線を移した。

吉鷹の式当日、逃げた新婦の話を聞いているときにも、茉莉花はおそらく今のように親身になって相談に乗ったのだろう。決して他人事ではなく、自分に置き換えて考えたに違いない。

彼女をなんとかしてあげたい。幸せな結婚をしてほしい。
そんな願いと想いが、あの結果に繋がった。

それは自分の仕事に対して誇りがあるからであり、責任を負っているからでもある。

自分と相通じるものを覚え、吉鷹はコーヒーを飲みながら茉莉花の可憐な横顔をいつまでも眺めていたい不思議な気持ちになっていた。
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