交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました

「そうなの、愛なんてどこにもない。親同士が勝手に決めた結婚なの」


彼女の父親は、マリアンジュのメインバンクでもある大手銀行の頭取だ。大企業の御曹司とお似合いだと思っていたが、愛のない政略結婚とは知らなかった。

でも、それで妙に納得したのも事実である。これまでの打ち合わせで、双方からは幸せそうな雰囲気は微塵も感じられなかった。

一般的に新婦の気持ちがもっとも華やぐドレス選びやヘアメイクの話で、彼女はいつも冷めていた。もともとあまり感情を出さないタイプなのかと勝手に決めつけていたが、そうではなかった。

深層心理を探ろうとしなかった茉莉花も、ブライダルヘアメイクのプロとして怠慢だったと言わざるを得ないだろう。


「そんな星の下に生まれたから仕方がないと最初は思っていたわ。でも無理。あんな人と未来なんて築けない」


結愛が新郎を〝あんな人〟呼ばわりする。嫌悪感が滲み出る言い方だった。
愛のない政略結婚とはいいえ、そこまで不快に思うものかと違和感を覚える。
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