交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
「新郎様となにかあったんですか?」
「あの人が言ったの。『キミを愛するつもりはない』とか『婚姻は形だけのものだ』とか」
それはひどい。いくら本意でない結婚だからといって、最初から背を向けていたら話にならないではないか。
(容姿端麗な紳士のふりして、血も涙もない男だったなんて……)
新郎の顔を思い浮かべて首を横に振る。結愛が不憫でならない。
「一度は好きな人を諦めようと思ったわ。でも彼にそんなことを言われたら……」
結愛が涙ぐむ。
こんな場面なのにメイク崩れを心配して、咄嗟にポケットからスポンジを取り出して彼女の目元にあてる。そもそもブライダルメイクは、多少の涙で崩れるような仕上がりではないが。
「……その方とはお付き合いをされていらしたんですか?」
茉莉花の質問に唇を噛みしめながら首を横に振る。