交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
「私の片想い。だけど、彼もきっと私を……。だって私が結婚すると知ったときの彼、ものすごく悲しそうな顔をしてたから」
結愛は茉莉花を通り越して遠い目をした。彼を思い浮かべているのか、恋する乙女の顔だ。これまで彼女が見せたことのない、花嫁たちが一様に浮かべる表情だった。
「だから伏見さん、お願い。私を逃がして」
「逃がす……?」
目を大きく見開いて彼女を見る。
(そんなことができる?)
結愛は茉莉花の両手を取って握りしめた。
「あの人と心を通わせるなんてきっと無理。幸せになれないとわかっている結婚なんてしたくない。もう伏見さんしか私を救えないの。だからお願い!」
大きなふたつの瞳が茉莉花を映して揺れる。
彼女が幸せになれるかどうかが、いきなり茉莉花の決断に委ねられた。
「一度、ご両親や新郎様とお話を――」
「そんなの無理に決まってるでしょう!? 顔を合わせたら、もうおしまいよ。そのまま式に連れ去られて逃げられない。だから今しかないの……!」