交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
さらに強く手を握られ、心臓が早鐘を打っていく。
べつの人を好きなまま結婚するのは、神の意思に反するのではないか。愛に溢れた結婚式をサポートしてきた茉莉花の願いにも反する。
夫婦になってから愛を育てていくパターンはもちろんあるだろう。
でも彼女の場合は違う。べつの人を愛しながら、それも愛を否定されたまま結婚生活を続けていかなければならないのだ。
そんな人生を彼女に無責任には科せない。
「お願い、伏見さん、私を逃がして!」
結愛がひと際強く願うと同時に、茉莉花も決心せざるを得なかった。
彼女が愛を貫くために。そして彼女の心を守るために。
「……わかりました」
静かに呟くと、結愛が「ほんと!?」と顔をぱぁっと輝かせる。
腕時計で時刻を確認。時間がない。
「急がないとブライダルアテンダーが来てしまいます」
「ありがとう!」