交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
「あら、おいしいお茶ね」
そのひと言にホッと息を吐き出した。第一関門突破だ。
ダイニングテーブルにはヘアメイクに使う道具が並べられ、準備は万端。あとは紫がお気に召すようなヘアメイクをするだけだ。
お茶を飲み干した紫をダイニングのほうへ案内する。持参した着物と帯の色味を確認してから、肩にケープをかけ、まずはメイクから。
道具を手に取ると、気持ちが一気に切り替わる。目の前の紫に一点集中した。
艶タイプのベースを仕込み、首の色に肌色を合わせる。決して白くしすぎず自然に。
目元には帯の柄に使われているオレンジ系のシャドウをベースに、目尻に赤みをプラス。ピンクベージュのリップは口角を美しく引きしめた。
「着物なのにあまり濃くしないのね」
「今は派手さのない自然なメイクが主流になっています」
ひと昔前は真っ赤な口紅に短く太い眉、切れ長の目という、おひなさまのようなメイクが基本だったが、それだとあか抜けない印象になってしまう。