交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
予定より少し早めに着いた吉鷹はコインパーキングに車を止め、マリアンジュのエントランスが見通せ、かつ茉莉花からは見えない場所に陣取って立つ。背後から声を掛けて驚かせるつもりだった。
(サプライズなんて、いったいどれくらいだ?)
思い返してみたが、大人になってからの記憶にはない。何度かある恋愛でも、そんな仕掛けは考えなかった。相手の反応を考えたり楽しんだり、それ自体がなかった。
積んでいたのは恋愛経験ではなく、単なる体の結びつきだけだったと思い知る。吉鷹も、茉莉花と同じく恋愛初心者同然だ。
子どものようにワクワクしながら待っていると、いよいよ茉莉花がサロンから姿を現す。しかし、追いかけようと一歩踏み出した足に、即座に急ブレーキをかけた。
茉莉花のあとから男が出てきて、彼女の隣に並んで歩きはじめたのだ。客としてサロンに通っていたときに一度だけ挨拶を交わしたことがある。たしか、マネジャーの菊川という人間だ。
その男が、なぜ茉莉花と一緒に出てきたのか。
単に退勤時間が同じという理由は、どうしたって当てはまらない。最寄り駅とは逆方向に歩いているのがなによりの証拠。声をかけるのを躊躇ったのは、そのためだった。
「……どういうつもりだ」