交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました

得体の知れぬ感情が胸の奥深くから沸き上がる。モヤモヤとは違う。センチメンタルでもない。
とてつもない熱量のフラストレーションだった。

彼女を好意的に感じつつあるのは知っている。しかしコントロールが効かないほど、好きなっていたのだと自覚したのは初めてだった。

ふたりの背中が見えなくなる寸でのところで、吉鷹も足を前に出す。見失わないよう、長い足を遺憾なく発揮して大股で追いかけた。

親しげにしゃべりながら、時折顔を見合わせて笑うふたりを見て、ふと勘繰る。
もしかしたら茉莉花には好きな男がいたのではないか。恋人はいないと言っていたが、それは好きな男の存在を否定するものとは違う。

驚くほど疑心暗鬼になっていると、ふたりはある店に吸い込まれるようにして入っていった。ジュエリーショップだ。

(なぜ、そんな店に……?)

もはや見過ごすわけにはいかない。茉莉花は自分の妻なのだから。
吉鷹は足を速め、ふたりを追いかけるようにして店に踏み込んだ。


「いらっしゃいませ」
< 150 / 293 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop