交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました

喜んでくれたのならなによりだ。ヘアメイクをされる人の表情がみるみる明るくなっていくのを見たり、誉め言葉をかけてもらえたりするのはやりがいにも繋がる。


「あっ、吉鷹さん、顔に粉が……!」


生地を捏ねていたせいだろう、彼の頬に粉がついていた。それもかなり広範囲にわたっているうえ、エプロンの胸のあたりにも飛んでいる。


「え? どこ」
「ほっぺです。あっ、そっちじゃなくて! ……ふふっ」


白くなった手が、逆側の頬を粉まみれにしていく。
思わず吹き出したら、吉鷹はその手で茉莉花の鼻先に触れた。


「やっ、ちょっ……」
「笑ったお返しだ。これでお揃いだな」
「ひどい」


ニヤリと笑った吉鷹を軽く睨むが、まるでおしろいを塗ったように白くなった顔を見たら、ちっぽけな怒りなんて持続不可能。おかしさが込み上げ、ふたりで笑い合う。

図らずも楽しくて、胸がくすぐったい。
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