交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました

離れがたさを覚え、無意識に彼の腕を掴む。その意味を図りかねたのだろう、吉鷹の瞳が揺らいだ。


「あ、これはその……」


咄嗟に手を離したが、喉のずっと奥、胸の深いところから彼への想いがせり上がってくる。いつの間に育ったのか、茉莉花にもわからない。
ただ、それを堰き止めるのが無理なのはわかった。


「……私も好きです」


心の赴くままを口にする。自覚した恋心を誤魔化したくなかった。

責任を負うためでしかなかった結婚が、その形を変えていく。不確かだった未来が今、鮮明に見えた気がした。

吉鷹がふっと笑みを零すと同時に鍋がシューッと音を立てた。


「あぁっ、大変! 熱っ」


慌てて蓋を掴み、今度はその熱さに驚く。


「大丈夫か!?」
「はい」


火加減が強すぎたのか、それともふたりの世界に没頭しすぎたのか。吹きこぼれて汚れたクッキングヒーターを急いで布巾で拭う。


「びっくりしましたね」
「ああ」


顔を見合わせて笑い、最後にもう一度だけ軽く触れるだけのキスをした。
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