交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
武者震いなのか、寒くもないのに体がぶるっと震える。散らかしたままのメイク道具を片づけながら、このあとの状況を想像して胃はしくしく痛んだ。
(大丈夫。きっとなんとかなる。……ううん、私がなんとかしなくちゃ)
大きな戸惑いから抜け出せないまま、ほどなくしてブライダルアテンダーが控室に現れた。
「……新婦様は?」
部屋の中を見回して、彼女が茉莉花に問いかける。
「トイレですか?」
しかし壁に掛けてある純白のドレスに気づき、すぐ「お着替えはまだなんですか?」と不可解そうに続ける。もう式がはじまる時間だ。
「新婦様は……お帰りになりました」
「えっ?」
まるで理解できないといった表情をする彼女を前にして覚悟を決める。
「今回の結婚を取りやめたいそうです」