交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
頷くのに精いっぱいだった茉莉花の耳に「副社長もずいぶんと変わったな」という永長のひとり言が届いた。
ふたりが去り、ひとりになった茉莉花は会場近くにあるソファに腰を下ろした。
出入り口のドア付近にはたくさんのスタンドフラワーが並び、名だたる企業の名前が連ねられている。どれも見聞きしたことのある企業名ばかりで、観月建設の威光を改めて目の当たりにした。
茉莉花は、その会社の新社長となる吉鷹の妻になったのだ。
(……本当に私でいいの?)
この期に及んで不安が頭をもたげるのは、ほかでもなく結愛が現れたせいである。
大企業の資金繰りを左右する大手銀行の頭取の娘と、小さな設計事務所の娘とでは格差がありすぎて勝負にすらならない。
もしも本当に新都銀行が観月建設への融資を取りやめたら――。
考えるのも怖い。
「茉莉花さん」
ひとりで悶々としていると、ふと声をかけられた。
顔を上げて驚き、急いで立ち上がる。