交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
徳之助が指を差したほうを見ると、鶯色の華やかな着物姿の紫がいた。取引先の奥様方だろうか、同年代の女性たちと話し込んでいる。そこだけとても賑やかだ。
今の茉莉花は家族以外にどこにも知り合いがおらず、ひとりポツンといるしかないが、ゆくゆくは紫のように華々しい社交界で人脈を広げていくのだろうか。
その輪の中で恥ずかしくないように、少しでも淑女のたしなみを身に着けていかなくては……とささやかなプレッシャーがかかった。
「ともかく、これから吉鷹は大変な立場になりますから、しっかり支えてやってください。まぁ私から頼まれずとも、責任感の強いあなたなら大丈夫でしょうがね」
徳之助から好意的な言葉をかけられるとは思いもしなかった。
どちらかといえば、吉鷹が押し切る形で推し進めた結婚。徳之助は心から祝福していなかっただろうから。
面と向かって激励され、結愛の登場で弱っていた気持ちがにわかに明るくなる。
「はい……!」
思わず力強く返事をすると、徳之助がふっと表情を和らげる。初めて向けられた笑顔だった。