交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました

「では失礼」


徳之助は腰のあたりで右手をひらりと返し、茉莉花から遠ざかっていった。

その背中を見送りながら、肩から力を抜く。
巨大企業の御曹司と結婚し、敵地にひとりで乗り込んだような心細さを抱えていたのを今、思い知った。

そのトップに君臨する徳之助に息子の妻として認められ、強力な味方をつけたような心強さがある。

(荒牧さんの件もきっと大丈夫)

そう楽天的に考えられるほど、気持ちが好転した。

ほどなくして就任式がはじまるとのアナウンスがあり、茉莉花は大勢の招待客の流れに乗って会場に入った。
豪奢なシャンデリアがいくつも吊り下がり、眩い光を放つ。式典の挨拶やスピーチのあと催される立食パーティー用か、左サイドの壁に沿って和洋折衷の料理が並びはじめていた。

吉鷹に言われた通り、向かいの中央にあるステージ近くに立つ。少し離れたところに永長を従えた彼を見つけたが、緊張感漂う真剣な様子から話しかけたり目配せを送ったりするのは控え、邪魔にならないようパーティションのそばに身をひそめた。

不意に会場の照明が落ち、ステージ上がスポットライトに照らされる。ボウタイを着けた司会の男性がマイクを片手に立った。
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