交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました

茉莉花のように自分から選んだ道ではなく、幼いときから一本しか道がなかったのだとしたら、とても息苦しかったのではないかと余計な心配をする。

大企業の御曹司だからといって恵まれているとは限らないのかもしれない。いろいろな我慢と制約のもとに人生があり、自分の意思は後回しなのではないか。職業選択の自由はないし、結婚ですら決められたものなのだから。


「でも、それに憂いを抱いたことは一度もない。今は副社長の立場だが、俺には何十万人という社員の人生を預かっている自負がある。悩んだり迷ったりしている時間があるなら、その分前に進むほうが断然いい」


ちょっとかわいそうと同情的になったそばから、吉鷹がさらっと覆す。ハワイで花嫁に逃げられても悩む素振りがなかったのは、そういう心構えがあるからなのかもしれない。

抱えているものが大きいうえに責任も重大。だから現状を嘆くのではなく、常に前を向いて突き進む。
茉莉花に代役をさせ、さらには本物の妻になるよう提案したのも、自分の責務を果たすため。
愛でも恋でもない。観月建設発展のために、夫婦という形が必要だからだ。

根っからの経営者気質といったらいいのか。そういうものを吉鷹から感じた。

茉莉花たちはその後、極上生肉とアボカドのミルフィーユや、ウニと特選赤身肉のロール寿司などを堪能し、店をあとにした。
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