交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました

ただ単に妻が欲しいのであれば、茉莉花でなくてもいいのにと思うが、彼には時間がない。就任式までになんとしても体裁を整えようと必死なのだろう。


「キミの返事次第でお父様の設計事務所を貶めるつもりはないが、俺と結婚すれば、より発展するだろうという前向きな提案だ」


茉莉花の父親は設計の仕事が大好きな人間。子どもの頃、ビルや商業施設などに連れられ、『お父さんが設計したんだ』とうれしそうに話す父を見るのはとても誇らしかった。そこにいる人たちに〝私のお父さんが造ったんだよ〟と触れ回ったこともある。

吉鷹は貶めるつもりはないと言うが、もしも今回の話を断り観月建設に歯向かう姿勢をとれば、ほかからの仕事がなくなる可能性もあるのではないか。吉鷹が直接手を下さなくても、観月建設を恐れて関係を断ちたがる会社があってもおかしくない。


「茉莉花」


吉鷹が茉莉花に上体を向ける。


「俺と、夫婦からはじめる恋、してみないか?」


ふざけているようにも、嘘をついているようにも見えない。吉鷹の眼差しは、茉莉花がたじろぐほど真っすぐで真剣だった。
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