交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました

その向こうに、何十万人という観月建設の社員たちがいるのがわかる。彼らの生活を守るため、そして会社のさらなる飛躍のため。吉鷹は人生を賭けているのだろう。


「『愛は最初からあるものじゃありません。ふたりで育てていくものではないでしょうか』と言ったのはキミだ」


自分の放った言葉が、ブーメランのごとく返ってきた。発言には責任を持てと言いたいのだろう。

恋愛経験もないくせに、人に愛を説くなんてどうかしている。知ったような顔をして偉そうに言った自分を思い返して恥ずかしい。


「ふたりでたしかめてみようじゃないか」


なにもないところに、本当に愛が育つのか検証しようと言う。

人生の大きな分岐点が、いきなり目の前に現れた。
どちらもその先は白く霞んで見えず、どんなものが待ち受けているかわからない。

それなのに、なぜか彼の提案した道のほうに、じわりじわりと決意が傾いていく。自分の発言に対する責任と、それを吉鷹とふたりで証明してみたい好奇心が茉莉花の背中を押す。


「わかりました。このお話、お受けいたします」


そう答えた瞬間、吉鷹は鼻に皺を寄せ、これまでにない無邪気な笑顔を見せた。
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