【書籍化に伴い冒頭のみ公開】クールな御曹司の溺愛ペット

「今日は十時から来客があるから、まずは準備をしましょう」

時東さんに言われるがまま、仕事に取り掛かる。

いきなり来客とかハードルが高い……。なんて思ったが、それよりも会議室の準備や呈茶の確認など覚えることが多すぎて時東さんについていくだけで精一杯。

受付までお迎えに上がるのも、会議室までご案内するのも、時東さんの丁寧でスマートな所作にただただ感服するばかり。

ちゃちなリクルートスーツを着た私は、その差をまざまざと見せつけられたのだった。

これは一成さんの殺しにかかる視線よりも時東さんのキャリアウーマンな仕事ぶりに心がやられそうな気がする。

初日から時東さんにバリバリ仕事を教えられ頭がパンパンの私は、定時を告げるチャイムと共に大きく息を吐いた。
ぐったりしている私とは対照的に、時東さんは一日働いてもしゃんとしている。化粧崩れもないし姿勢だって綺麗。このまま明日を迎えても平気そう。
すごいな……と感心していると、ふとあることに気づいた。

私、明日からスーツどうしよう。

今日は初日だからリクルートスーツできたけれど、よく考えたらこのままじゃやばいのでは?時東さんみたいにおしゃれスーツじゃないといけないのかも。

……一枚も持ってませんけど?

< 12 / 20 >

この作品をシェア

pagetop