黒い龍は小さな華を溺愛する。


力いっぱい上から押さえつけられていたから、紙袋の中で顔が汗と涙でぐちゃぐちゃになっていた。


でもそんなのどうでもいい。


私の顔の価値なんて、最初からないも同然だ。


そう、だから期待なんかしちゃだめだったのに。


「おい、アレやるぞ」


「はぁ、やっぱやんなきゃダメかよ」


「当たり前だろ、賭けに負けたんだから」


「なんで俺がこんな女と!」


なにやら揉めているようだ。

私はどうやって逃げようかとばかり考えていたけど、きっと男の力には敵わないだろう。


すると突然勢いよく紙袋を取られ、髪を引っ張られた。


次の瞬間、ガツッと歯に衝撃があるのと同時に唇に柔らかい感触があった。


伊田くんの顔がすぐ目の前にあって……

今……唇当たったよね……?


「よし、いいのが撮れた」


相羽くんの声でハッとする。

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