私の想いが開花するとき。


「里穂っ!」


 勢い良くタクシーから出てきた宏太は里穂をぎゅっと力強く抱きしめた。


「宏太……」
「お前こんなところでなにしてんだよ!」
「ごめっ、でも、ここに入っていちゃってさっ、ははっ」
「もういいから、お前俺んとこ来い」


 宏太の真剣ですこし怒った顔が里穂の視界をいっぱいにする。


「こう、んっ……」


 宏太の息を直に感じた。燃えるように熱くて舌が溶け出しそう。何度も何度もキスの合間に息を吸い直し唇が二人の液ですべるたびに紡ぎ直した。
 ぶわっと涙が溢れ出す。宏太が好きだ。大好きだ。
 健治が里穂の知らない人、しかも男と不倫していた事実も辛かった。本気で好きではなかったとはいえ、家族になろうと決めた人だったから。けれど里穂も本気で健治のことを好きではないことが健治にも伝わってしまっていたのだろう。健治の不倫は自分のせいだ。それに健治だけを責めるなんてことは出来ない。こうして抱きしめられているこの腕を自分はいっさい振りほどこうとしないのだから。宏太のことがどうしても忘れられなかった自分のせい。


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