愚かな男を愛したセリーナ
 そう思ってしまうほど、彼を思い出すと切なくて、泣いてしまう。涙がこぼれ落ちないように、また空を見上げる。セリーナは自分のこころについている傷を癒す手段を、見つけることができずにいた。

「セドっ」

 溜息交じりに呟くと、彼の笑った顔を思い出す。あの夜の彼の手は、どんな時よりも熱かった。

 ——慰めたかった、だけなのに。

 アイラと似たセリーナを抱くことで、セドリックが少しでも癒されればそれでいい。――それだけだったのに。

 彼に抱かれたことで、自分のこころを騙していたことに、気がついてしまった。アイラの代わりでもいい、なんてちっとも思っていなかったことを。――セリーナの名前を呼んで、抱いて欲しかったことを。妻として、愛されたいことを。思い知らされて、そして傷ついて、もう、彼の顔をみることができなくなった。

「セドリック……」

 上を向いても、目尻からは涙が筋をつくり、流れていた。





「街に来た銀髪の魔術師、背は小さいのにスゲェ美人でさぁ」

 セドリックの前からセリーナが消えてもう、三ヶ月も経っていた。いくら探しても、見つからない。妹のアイラにも、何も知らないと言われてしまう。

 どこをどう、探していいのか、皆目見当がつかない。そんな日にギルドで聞いた噂話は――

「お、おい、その話の、銀髪の魔術師のこと、教えてくれ!」
「あ、あぁ。そいつは――」

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