家の中になにかいます【短編】
これが奇妙な異世界人を拾った始まり。
そして。

「ただいま、クロウ。今日のごはんは?」

「アジの塩焼きと卵焼き、れんこんのきんぴらにトン汁だ」

「わーい、嬉しい!!」

あれから2年がたった。
なかなか帰る手立てがなかったクロウは寂しそうによく空を見つめていたが、諦めたのか専業主夫として家のことを切り盛りしていた。
空は彼の故郷を思い出すものだということだった。
暇さえあれば図書館にいき、この国の歴史、文化、帰る方法を貪るように探して。落胆を繰り返していたのは知っている、けれどこの国に来て笑うことが増えたのは悪いことはしなく気恥ずかしいと言って馴染むことに抵抗も見せなくなっていた。


そしてどんどん昇進していた私。一家の大黒柱として働きだした私は生活をなんとかしないといけないという無意識でのプレッシャーが、仕事への意欲として見られたのだろう。
男でもできたのかという周りの声に否定も肯定しなければ自然と噂は彼氏ということで落ち着いた。

食卓に色とりどりの品々が並び、いただきますとお互い手を合わせたとき、彼がこの国の人であればいいのになと少なからず思っていた。一緒にいるたびその思いは強くなっていた。彼はいまだに住所不定、国籍なし男。

外にいけば、これはなにだ、これはなにだと質問攻め。
そしてここには何々はいないのか、など知らない言葉がでれば私が質問していた。
元カレとは違うあたたかな感情、本当に情を持ってしまった。できれば、このままいてほしい。周りは咎めるだろう、でも。それでも。
ベッドで寝るが手出しは絶対されなかった、これは施されているってのがわかったからのプライドなのか単に私自身に魅力がないからか。
関係が崩れるのが怖い、そのままでいいけど、物足りない。どんどんわがままになりそうな自分をいつも諫めた。
< 3 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop