やさしい嘘のその先に
 そんな稀更(きさら)の言動に、さすがに耐え切れなくなった美千花(みちか)だ。


「本当は……すっごくすっごく気になってます。……当たり前じゃないですかっ」

 もうこれ以上何も聞かせないで欲しい。
 律顕(りつあき)との事は二人でちゃんと解決していくから。

 両手で耳を塞いで(うつむ)いた美千花に、稀更が小さく吐息を落とした。

「だったら……その気持ち、ちゃんと彼に伝えなきゃダメだよ? 何も言わずに我慢ばっかりしてたら、〝私達みたいに〟なっちゃう」

 稀更の声音が、ふわりと(やわ)らいだ気がして、美千花は恐る恐る顔を上げて。

 すぐそばの稀更と目が合ったと同時、
「ごめんね。入院中なのに意地悪な言い方ばかり。……しんどかったよね、本当にごめんなさい」
 言いながら頭を下げてきた彼女に、美千花は心底驚かされた。

「だけど――永田君も貴女もお互い(あんま)りにも本音をぶつけ合ってないみたいだったから……凄く気になってしまって」

「……でも」
(例えそうだとしても西園先輩には関係ないよね?)
 そう思った美千花だ。
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