身代わり少女は主人を慕う
そして朝を迎えて、私はその人に、おにぎりを一つ貰って食べた。

昨日の朝は、家族みんなで朝ご飯食べたのにな。

そう思うと、なんだか悲しくなってきた。

「さあ、行くか。」

「はい……」

そして昨日は、人買いについて行ったのに、今日はこの人について行く事に。

人生、何が起こるか分からない。

「あの……家って、遠いんですか?」

「いや、この森を抜けたところだよ。」

その人は、森の向こうを指さした。

私は、生まれてこの方、この森の向こうに行った事がない。

村を抜け出したのも、昨日が初めてだ。


「すぐ着くからね。」

その人は、優しそうに私に手招きをした。
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