身代わり少女は主人を慕う
「風呂?」

「なんだ、風呂も知らねえのか。服を脱いで、お湯に浸かるんだよ。」

年に一度、お正月にするものかと、頭を過ったけれど、いざ本物のお風呂に行ったら、想像と違っていた。

大勢の人が、大きな箱の中のお湯に、浸かっている。

私も一緒に入ってみると、それは気持ちのいいモノだった。

街に行ったら、こんな気持ちいい物が、手に入るのかな。

そんな楽しい事を思い浮かべながら、私はお風呂から出た。

手拭いで軽くかいた汗を拭きながら、泊まる部屋を目指して歩いていると、人買いがある人と話をしていた。

何を話しているのだろうと、そっと近づいてみた。

「おい、今日の娘の家、分かるな。」

「はい。」

「要領よく始末して来いよ。」

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