お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
「す、すみません。大知さんの邪魔にならないようにと思って……」

 白状して、背中を丸める。本当はもっと彼のそばにいたいのに、嫌われたくなくて、好きだという気持ちが大きすぎてうまくいかない。

 そういえば実家に大知さんが来た際、父や母と談笑する中で姉がよく彼の隣に座っていたのを思い出す。あんなふうにごく自然に、大知さんと並んで楽しそうに会話している姉が羨ましくて眩しかった。

「千紗が邪魔になるわけない。俺の大事な奥さんなんだから」

 大知さんはカップを置き、真剣な眼差しでこちらを見てくる。硬直したまま見つめ返していたら、ふと彼が表情を崩し、懐かしそうに目を細めた。

「実家に行かせてもらったとき、こうやって千紗がよくお茶を淹れてくれたな」

 他の家族と比べてあまり話題に入れない私は、気がつけば大知さんが来たときにお茶やコーヒーを用意する役割を担っていた。

 どんなに話が弾んでいてもお茶を持っていった際、大知さんは必ず会話を止めてお礼を言ってくれる。

 そのときだけでも彼の意識は私に向けられ、ひと言ふた言会話できるのが嬉しかった。

 叶うわけがないと憧れだけを募らせた片想いの相手と、今は結婚しているのだから人生はわからない。

「いつもありがとう」

 大きな手のひらが頭の上にのせられ、彼への想いがあふれそうになり胸が詰まる。

「……大知さんこそいつもありがとうございます」

 極力声の震えを抑えて返す。

 すると不意に目が合い、大知さんはそっとこちらに身を寄せてきた。
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