お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
 ごく自然に目を閉じたら予想通り唇に温もりを感じ、彼を受け入れる。重ねるだけの優しい口づけに心が満たされていく。

「もっと近くにおいで」

 甘く囁かれ、小さく頷いた。それを見てすぐに肩に腕を回され、大知さんの方へ抱き寄せられる。密着した体の右側は異様なほど熱く感じた。

 ややあって早鐘を打っていた心臓は落ち着きを取り戻し、逆に安堵感をもたらす。肩に触れていた手は頭に伸ばされ、髪を撫でられる。

「遠慮しなくていい。俺たちは夫婦なんだから」

 うっとりしそうだった気持ちが急に冷たくなった。大知さんはなにも間違っていないのに、彼の言葉をどう捉えていいのかわからずに揺れる。

 この触れ合いは夫婦だから? 義務感なの?

 歩み寄ってくれるのがうれしい一方で、彼の気持ちはどうなんだろう。

 ちらりと上目遣いに大知さんを見つめたら、急に視界が暗くなる。すぐそばに彼の整った顔があり、唇を掠め取られた。

 私にとっては先ほどとは違い不意打ちのキスで、驚きで目を閉じるどころか見開いたままになる。

 反応が遅れ、動揺する間もなく離れた唇が重ねられた。こんなことは初めてでどうしたらいいのかわからない。

 嫌な気持ちはまったくないのに、無意識に身を固くして唇を引き結ぶ。

 そんな私に対し、大知さんは角度や触れ方を変えながら幾度となく口づけていく。彼の手は後頭部から頬に移動し、大きくて骨ばっている男の人の手の感触にどぎまぎする。
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