お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
 さらに、まさかイノシシまでいるとは思わず、横になってくつろいでいる姿に釘付けになった。

 ポニーの赤ちゃんはぬいぐるみみたいで、親のサイズもそこまで大きくないのもあり、親子で並ぶ姿は愛らしくいつまでも見ていたくなる。

 噂のお菓子屋でソフトクリームを注文し、ベンチに並んで腰を落としてひと息つく。

 真っ白なソフトクリームをスプーンでひとすくいして口に運ぶと、冷たさの次に濃厚なミルク風味が口内に広がる。甘すぎずさっぱりしていて美味しい。

「聞いていた通り、たくさんの動物と触れ合えますね」

「子どもたちとの会話に入れてもらえそうか?」

 しみじみと呟くと、からかい交じりに返される。私はにこりと頬笑んだ。

「はい。先生も行ったよ!って答えられそうです」

 私の返答に目を見張った後、大知さんは私の頭をそっと撫でる。

 もしかして子どもと同じレベルだと思われた?

 彼の意図が読めずに困惑する中、さっきから自分ばかりが食べていたと気づく。

「あの、大知さんもよろしければどうぞ」

 スプーンを使っていたのであからさまな食べかけではない。大知さんの方に差し出したら、受け取ろうとするためか彼の手がコーンに伸ばされる。

 次の瞬間、大知さんは受け取るどころかコーンを持つ私の手に自分の手を重ねた。驚く間もなく彼の方に引き寄せられ、大知さんはソフトクリームに直接口をつけた。

 その仕草がまったく下品になっておらず、むしろ目を奪われる。そっと手を離され、かじられたソフトクリームが私の手の中に残った。
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