【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
ガチャリとドアを閉めた直後、すぐ外の廊下を複数の重い足音と話し声が通り過ぎていく。
……どうやら、見つからずに済んだらしい。
でも、張りつめていた緊張はまだ胸を締めつけたまま。
『…ねえ。今、なんで私を助けたの?────天音くん』
静まり返った部屋の中で、やっと天音くんと視線が重なった。
その目はいつもみたいに柔らかく笑っていなくて、沈んだ影を落としている。
聞きたいことは山ほどある。
でも一番先に出たのは、やっぱりこれだった。
『天音くんは……敵なの…?味方なの?』
あの時、私を捕らえてここへ連れてきたのは紛れもなく天音くんだ。
でも今は私をかばってくれた。
……行動が、矛盾してる。
天音くんは視線を伏せ、しばらく黙ったまま口を閉ざした。
重たい沈黙が二人の間に落ちる。
「…俺は、BSの人間だよ。あの時分かったでしょ?」
ようやく返ってきた答えは、感情の篭っていない、あまりにも淡々としたものだった。
『じゃあ、今、私を助けた理由は?』
「助けるつもりなんてなかったさ。今まで一緒に過ごしてきたから…勝手に体が動いただけ」
体が勝手に…。
天音くんはそう言うけど、本当に敵なら、すぐに朔へ報告すれば良かったはずだ。
『天音くんさ、前に言ってたよね。”この場所が好きだ、これは嘘じゃない”って。あれって、White Lillyのことなんじゃないの?』
「…そんなこと言ったけ?覚えてないや」
『言ってたよ!私が熱で倒れて、保健室で寝てた時…』
「まーどうでもいいけどさ。もうあそこに戻るつもりないから」
覚えてないなんて、嘘。
だって、私に問いかけられて一瞬言葉に迷ってたじゃん。