総長は、甘くて危険な吸血鬼
私達がドアを閉めた直後、
すぐ外を複数の足音と話し声が通り過ぎていった。
……どうやら見つからずに済んだらしい。
でも、張りつめていた緊張はまだ胸を締めつけたまま。
『…ねえ。今、なんで私を助けたの?……天音くん』
やっと、視線が合った。
その目はいつもみたいに柔らかく笑っていなくて、沈んだ影を落としていた。
聞きたいことは山ほどある。
でも一番先に出たのは、やっぱりこれだった。
『敵なの…?味方なの?』
あの時、私を捕らえてここへ連れてきたのは紛れもなく天音くんだ。
でも今は私をかばってくれた。行動が、矛盾してる。
天音くんは視線を伏せ、しばらく黙ったまま口を閉ざした。
重たい沈黙が二人の間に落ちる。
「俺は、BSの人間だよ。あの時分かったでしょ?」
やっと返ってきた答えは、淡々としていて。
『じゃあ、私を助けた理由は?』
「助けるつもりなんてなかったさ。今まで一緒に過ごしてきたから…勝手に体が動いただけ」
体が勝手に…
天音くんはそう言うけど、それならすぐに朔へ報告すればいい。
私が逃げ出そうとしているなんて、今の天音くんなら一言で潰せるのに。
『天音くんさ、前に言ってたよね。”この場所が好きだ、これは嘘じゃない”って。あれって、White Lillyのことなんじゃないの?』
「…そんなこと言ったけ?覚えてないや」
『言ってたよ!私が熱で倒れて、保健室で寝てた時…』
「まーどうでもいいけどさ。もうあの場所に戻るつもりないから」
覚えてないなんて、嘘。
だって、私に問いかけられて一瞬言葉に迷ってたじゃん。