総長は、甘くて危険な吸血鬼


私達がドアを閉めた直後、
すぐ外を複数の足音と話し声が通り過ぎていった。

……どうやら見つからずに済んだらしい。

でも、張りつめていた緊張はまだ胸を締めつけたまま。


『…ねえ。今、なんで私を助けたの?……天音くん』


やっと、視線が合った。

その目はいつもみたいに柔らかく笑っていなくて、沈んだ影を落としていた。

聞きたいことは山ほどある。
でも一番先に出たのは、やっぱりこれだった。


『敵なの…?味方なの?』


あの時、私を捕らえてここへ連れてきたのは紛れもなく天音くんだ。

でも今は私をかばってくれた。行動が、矛盾してる。

天音くんは視線を伏せ、しばらく黙ったまま口を閉ざした。
重たい沈黙が二人の間に落ちる。


「俺は、BSの人間だよ。あの時分かったでしょ?」


やっと返ってきた答えは、淡々としていて。


『じゃあ、私を助けた理由は?』

「助けるつもりなんてなかったさ。今まで一緒に過ごしてきたから…勝手に体が動いただけ」


体が勝手に…

天音くんはそう言うけど、それならすぐに朔へ報告すればいい。

私が逃げ出そうとしているなんて、今の天音くんなら一言で潰せるのに。


『天音くんさ、前に言ってたよね。”この場所が好きだ、これは嘘じゃない”って。あれって、White Lillyのことなんじゃないの?』

「…そんなこと言ったけ?覚えてないや」

『言ってたよ!私が熱で倒れて、保健室で寝てた時…』

「まーどうでもいいけどさ。もうあの場所に戻るつもりないから」


覚えてないなんて、嘘。

だって、私に問いかけられて一瞬言葉に迷ってたじゃん。

< 256 / 405 >

この作品をシェア

pagetop