総長は、甘くて危険な吸血鬼
『天音くん、一緒に帰ろう』
「…は、今の話の流れで何でそうなる?俺戻るつもりないって言ったよね?」
『私を連れ去った時も、今も、天音くん辛そうな顔してる。生徒会にいた時は楽しそうだったのに』
いつもの天音くんは、もっと明るくて、人懐っこい人だった。
でも今はテンションも低いし、いつも人のパーソナルスペースに普通に入ってくるくせに逆に壁を作られていて、ある程度距離を取られている。
『やっぱり敵だなんて思えないよ。ねえ、何か事情があるんじゃないの?』
「まだ俺のこと信用してんだ。そんなだから警戒心がないって言われるんだよ。」
『話を逸らさないで!』
「…こう言う時に頑固なとこ、叶兎にそっくり。」
さっきから話を逸らそうとはぐらかされる。
でもそれは、やっぱり何か事情があるってことなんじゃないか。
「胡桃ちゃんには関係ないから。俺個人の問題に首突っ込んでこないで」
初めて本気で拒否された気がする。
今まで見たこともない、冷たい壁を感じた。
こんな風に他人を拒絶する天音くんを、私は知らない。