総長は、甘くて危険な吸血鬼

「てめぇ、ホントに裏切るつもりか?」

「…」

「回答次第でもう一発殴る」


答えない天音くん。

再び拳が振り上げられようとするのを見て、私は慌てて二人の間に割って入った。


『…ま…待って待って!ストップ!』


両腕を広げて押しとどめると、
九条くんは苛立ちを隠さず、私を睨んだ。

聞かなくても分かる。なんで止めたんだよ、という顔。


「イラつかねぇの?お前がここに連れてこられた原因だってこいつが裏切ったからだし、胡桃は1番怒っていい立場だろ!俺はお前のために怒って…」

『それはそうなんだけど!!私のために怒ってくれてありがとう、でも、仲間割れしてるところは見たくない…』


そう告げると、天音くんは苦しそうに視線を逸らした。

九条くんは「はぁ」と大きく息を吐き、眉間に皺を寄せる。


「コイツのことまだ仲間だと思ってんのか?お人好しが過ぎるだろ…」

『でも、さっき逃げてる途中に見つかりそうになった時この部屋に隠してくれたのは天音くんなの』

「……はぁ?」

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