【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
まあ、そう言う反応になるよね…。
九条くんの呆れ果てた顔を見て、私は心の中で苦笑いする。
「お前ホントに何がしたいんだよ」
九条くんが吐き捨てるように問うと、天音くんは淡々と口を開いた。
「…今は何も命令されてないから」
「命令って……なあ胡桃やっぱもう一発殴っていい?」
『なんでそうなるの!!』
またもや思わず声を張り上げて、ツッコミを入れてしまった。
天音くんも天音くんで、相手を怒らせないようなもうちょっとマシな返答をしてほしい。
「…まあ、いいわ。1番コイツをぶん殴りたいのは叶兎だろうし、アイツに任せる」
…なんか、叶兎くんが本気で怒った時の顔を想像したら、今の九条くんなんて格段に優しい方に思えてきた。
叶兎くんが本気で怒ったら、こんなパンチ一発じゃ絶対に済まない。
うん。天音くんと叶兎くんはしばらく会わせないようにしよう。
「行くぞ胡桃。一気に裏口まで逃げる、絶対俺から離れんな」
そう言って、九条くんは私の手を力強く握りしめた
「…あー、嫌かもしんないけど今だけ我慢して。一気に走るから」
手を繋ぎながら、ふと思う。
なんだか時々、九条くんがすごく年上の頼れる大人に見える時がある。
それでいて、どこか叶兎くんに似た、不器用で温かい優しさがあって…。
九条くんに強く手を引かれながら、私も覚悟を決めて走り出した。