総長は、甘くて危険な吸血鬼
建物内の廊下は入り組んでいて、進んでも進んでも同じような道が続いていた。
窓が網戸で塞がれていて外が見えないのが余計に困惑させてくる。
九条くんは迷わず進んでいくけど…
「うわっ… !」
『わっ!』
走っていたのにいきなり立ち止まるもんだから思い切り九条くんの背中に顔をぶつけた。
『ちょ、急に止まらな…』
「しっ」
言いかけた瞬間、壁際へ押しやられる。
九条くんと壁のあいだに押し込まれる形で、完全に前が見えなくなった。
今の九条くんの姿は、いつもより格段に背が高いから余計に。
「うわ、ビックリしたな!おまえ曲がり角は気をつけろよな!」
向こうから知らない男の声がする、
私は気づかれないように息を潜めて九条くんの背に隠れた。
「はは、悪い悪い!ちょっと急いでたもんで」
それに返答した九条くんは、普段の低めの声のトーンや喋り方とはまるで違う、別人のようだった。