【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
「…吸血鬼には特別な力があるんだ」
『特別な、力?』
「血筋能力っつってな。生まれながらに、その家系だけが受け継ぐ固有の能力のことだ。例えば……俺なら」
バイクのハンドルを片手で握ったまま、九条くんが軽く指をパチンと鳴らした。
次の瞬間、私の目の前で彼の姿がゆらりと揺れ、あっという間に見慣れた姿へと変わっていく。
高かった身長はいつもの私と同じくらいの高さに戻り、茶色だった髪は、きらめく銀色に。
「俺の能力は、自分の姿や気配を自由に変える能力」
バイクを止めることなくチラリと振り返ったその顔は、紛れもなくいつもの九条秋斗くんだった。
『えっ……えええ……!?』
いきなり能力がどうこう言われても信じられないけど。
今目の前で見たものは紛れもない事実だった。
ついさっきまで「知らない男」だった人はもうどこにもいない。
今ここにいるのは、九条くんだ。
「能力の詳細、ホントはあんまり人間に話しちゃいけねぇから他言無用な。俺以外のWhite Lillyのみんなもそれぞれ能力を持ってる。例えば叶兎は身体能力の強化。あいつは元々つえーけど血筋能力使ったら物理的に勝てる人いねぇと思う」
胸の奥がざわついた。
みんなも何かしら能力を持っているんだ。
……吸血鬼という存在は、私が思っていたよりもずっと“人間離れ”していて、住む世界が違う存在なのかもしれない。
「でもそれは“物理的に”ならって話で。…BSの総長とは、相性が悪い」