総長は、甘くて危険な吸血鬼


「…吸血鬼には特別な力があるんだ」

『特別な力?』

「血筋能力っつって、生まれながらにその家系が持つ能力。例えば俺なら…」


九条くんは軽く指を鳴らした。
次の瞬間、私の目の前で彼の姿がゆらりと揺れ、あっという間に見慣れた姿へと変わっていく。

高かった身長はいつもの私と同じくらいの高さに戻り、
茶色だった髪は、きらめく銀色に。


「俺の能力は、自分の姿を変える能力」


振り返った顔は、紛れもなく九条くん。


『えっ、え…!?』


いきなり能力がどうこう言われても信じられないけど
今目の前で見たものは紛れもない事実だった。

ついさっきまで「知らない男」だった人はもうどこにもいない。
今ここにいるのは、やっぱり九条くんだ。


「能力の事ホントはあんまり人間に話しちゃいけねぇから他言無用な。俺以外のWhite Lillyのみんなもそれぞれ能力を持ってる。例えば叶兎は身体能力の強化。あいつは元々つえーけど血筋能力使ったら物理的に勝てる人いねぇと思う」


胸の奥がざわついた。

みんなも何かしら能力を持っているんだ。

…吸血鬼という存在は、私が思っていたよりもずっと“人間離れ”しているのかもしれない。


「でもそれは“物理的に”ならって話で。…BSの総長とは相性が悪い」

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