総長は、甘くて危険な吸血鬼
「なんて、急にこんな話されても困るよな。あんま深く考えないで良いから。へーそうなんだ〜ぐらいに思っといて」
『…吸血鬼の事情とかみんなの事情とか私にはまだよくわからないけど、話してくれてありがとう』
「おう」
そうしているうちに、いつの間にか私たちは学園の目の前まで戻ってきていた。
建物を抜け出した時にはまだ夕日が残っていたのに、今はすっかり夜の帳が落ちている。
辺りは静まり返り、生徒の気配もなく、灯りを失った学園は昼間とはまるで別の顔をしていた。
バイクを降りて裏口の門から敷地内に入ると、
静まり返っているはずの学園内から何やら声が聞こえてきた。
…それも、不良が騒いでいるような声。
聞き間違えようのない、荒っぽい叫びや罵声。
静まり返っているはずの学園に、不自然な騒ぎが響いてくる。
「…っ遅かったか」
つぶやいた九条くんの表情が、夜の闇の中でも険しく見えた。
きっと、さっき彼が言っていた通りのことが起きているのだ。
「胡桃、そこの裏扉から真っ直ぐ生徒会の寮まで戻って。電気はつけなんなよ」
『えっ、でも』
頭では分かっている。ここで私が一緒に行ったって何もできない。
むしろ迷惑をかけてしまうだけ。
けど…また守られてばかりで、隠れているなんて嫌だった。
そこで、さっき九条くんが話していたことを思い出した。
…私にも出来ること、あるじゃん。