【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ



叶兎くんが相手をしているのはBSの相手だけじゃなかった。

春流くんに、桐葉くんと飛鳥馬くんも…。


…なんで?!

天音くんだけじゃなくてあの3人もそういう感じってこと…?!



「違う、あれが朔の能力だ」



木の裏に身を隠しながら様子を伺っていた九条くんが言った。


能力…操られてるってこと…?

…そんな力、無敵すぎるし、悪趣味すぎる。


血の気が引いた。

仲間同士を戦わせるなんて、性格悪いにも程がある。



「あいつ……趣味悪ぃな。」



目の前では、操られた三人が容赦のない攻撃を叶兎くんに浴びせかけていた。

けれど……叶兎くんは、一度だって反撃をしない。


ただひたすらに攻撃を交わし、防御を重ねている。

それは戦いというより仲間の暴力を“耐える”戦い方だった。



「君って仲間とは戦えない性格だもんね〜、そんなんだからくーちゃんのことも守れないんだよ?」



すまし顔で立つ朔が、あざ笑うように言葉を投げる。

その声音は静かで、逆に胸を抉るように冷たかった。


「っ…」


叶兎くんがわずかに歯を食いしばる。

その瞳には迷いと苦しみが浮かんでいた。



──仲間とは戦えない。


叶兎くんは、根は本当に優しい人。


仲間を大切にして、困っている人がいたらすぐに手を差し伸べる。


でもその優しさが、今は彼を縛り付けている。



……やっぱり私、そんな叶兎くんのことが好きだ。


だからこそ私も、力になりたい。




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