総長は、甘くて危険な吸血鬼



叶兎くんが相手をしているのはBSの相手だけじゃなかった

春流くんに、桐葉くんと飛鳥馬くんも…

…なんで?!
天音くんだけじゃなくてあの3人もそういう感じってこと…?!


「違う、あれが朔の能力だ」


木の裏に身を隠しながら様子を伺っていた九条くんが言った。

能力…操られてるってこと…?

…そんな力、無敵すぎる。


血の気が引いた。

仲間同士を戦わせるなんて、性格悪いにも程がある。


「あいつ趣味悪ぃな。」


目の前では、三人が容赦なく叶兎くんに襲いかかっていたけど、
叶兎くんは…反撃しなかった。

ただひたすらに攻撃を交わし、防御を重ねている。
それは戦いというより仲間の暴力を“耐える”戦い方だった。


「君って仲間とは戦えない性格だもんね〜、そんなんだからくーちゃんのことも守れないんだよ?」


すまし顔で立つ朔が、あざ笑うように言葉を投げる。
その声音は静かで、逆に胸を抉るように冷たかった。


「っ…」


叶兎くんがわずかに歯を食いしばる。
その瞳には迷いと苦しみが浮かんでいた。

──仲間とは戦えない。


叶兎くんは、根は本当に優しい人。

仲間を大切にして、困っている人がいたらすぐに手を差し伸べる。
でもその優しさが、今は彼を縛り付けている。



……やっぱり私、そんな叶兎くんのことが好きだ。


だからこそ私も、力になりたい。



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