総長は、甘くて危険な吸血鬼
満月の下、君との約束
【side叶兎】
「お前その“くーちゃん”って呼ぶのやめてくんない?ムカつくから」
「は?何で君の言うこと聞かなきゃいけないの?」
「胡桃は、俺の彼女だから」
「この状況でよくそんなこと言えるね。あと少しで僕のものになるのに」
殴り飛ばしたい。
拳のひとつでも入れて黙らせたい。
だけど、朔に操られた春流、桐凪、羽雨…三人を相手にするので精一杯だ。
「チッ…おい、目覚ませよ!…あいつなんかに、操られてんじゃねぇよ!」
いくら声をかけても、返ってくるのは無言の拳と蹴りだけ。
朔が言った通り…俺は、仲間を殴れない。
こんな状況でそんなこと言ってる場合じゃないのは分かってる。
…でも、体が言うことを聞かない
無理なもんは無理なんだよ。
だから俺にできるのは、避けるか防御することだけだった。
でも、3人ともそれなりに強い。
中途半端な守りじゃ押し潰される一方で、反撃しなきゃどうにもならない。
胡桃を絶対に守ると決めたのに……俺は、足掻くだけで手も足も出せていなかった。