【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
満月の下、君との約束
【side叶兎】
「お前その“くーちゃん”って呼ぶのやめてくんない?ムカつくから」
「は?何で君の言うこと聞かなきゃいけないの?」
「胡桃は、俺の彼女だから」
「この状況でよくそんなこと言えるね。あと少しで僕のものになるのに」
殴り飛ばしたい。
拳のひとつでも入れて黙らせたい。
だけど、朔に操られた春流、凪、羽雨…三人を相手にするので精一杯だった。
「チッ…おい、目覚ませよ!…あいつなんかに、操られてんじゃねぇよ!」
いくら大声を張り上げても、返ってくるのは感情の籠もっていない無言の拳と鋭い蹴りだけだ。
朔の言う通り……俺は、自分の仲間を殴ることができない。
こんな切迫した状況で甘いことを言っている場合じゃないのは、頭では重々わかっている。
……けど、身体が拒絶するんだよ……っ!
だから俺にできるのは、避けるか防御することだけだった。
でも、3人ともそれなりに強い。
中途半端な守りじゃ押し潰される一方で、反撃しなきゃどうにもならない。
胡桃を絶対に守ると決めたのに……俺は、足掻くだけで手も足も出せていなかった。