総長は、甘くて危険な吸血鬼
…けど
しばらくすると、三人の動きがほんの一瞬だけ鈍くなった。
その隙を見逃さず、俺は飛び出して朔の目の前に立ちはだかる。
「んなとこで見てないで自分で戦えよ、朔。どうせお前とはいつかこうなる運命だった」
真っ直ぐ、睨みつける。
いつぶりだろう、こうして朔と視線を交わしたのは。
昔はもっと優しい顔をしていたはずなのに。
今、目の前に立つ朔の顔は覇気も温もりもなく、冷たい仮面みたいだった。
そんな朔を庇うように、副総長の蓮水が前に出てきて手をかざす。
「うちのボスに手出しはさせねぇ」
「…」
「…何だよ」
見たところ、今のBSの大半の人たちは朔の能力で従わされている。
朔がそれだけの力を持ってるのは事実だ。
…でも、目の前の副総長は別に能力の影響を受けていない気がする
数回しか会ったことなかったけど、蓮水は喧嘩も強いし
何で朔に従ってるんだろう…?
「…は、何で…?」
蓮水が小さく呟き、俺の背後を見て目を丸くした。
…後ろ?
振り返った瞬間、息が止まった。
そこにいたのは俺が今1番会いたい人だった。