【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ


「後ろは任せろ」


胡桃を庇うように蓮水の前に立ったのは秋斗だった。


秋斗…!

“目の前の敵だけ見てろ”とでも言いたげに、秋斗は俺に向けて顎をクイっと上げる。


…秋斗は強い、俺が見込んだ男だからきっと大丈夫。



「…分かった、そっちは任せる」



後ろの心配を一切せずに目の前の敵に集中できるようになってからは、一分もしないうちにBSの連中はほとんど地面に倒れ伏していた。

何人か強い奴も混ざっていたが、相手のほとんどが人間だったから容赦なく叩きのめすことができた。


……にしても。

純混血である胡桃が目と鼻の先にいたのに、BSの奴らは能力の影響を受けていなさそうだった。


純混血の力は珍しい分、謎が多い。

すべての力を無効化できるわけじゃないから、完全に無敵というわけでもないのだろう。


春流たちが完全に正気に戻ったのも胡桃に名前を呼ばれてからだし、何か発動のトリガーが必要なのかもしれない。


とにかく、残るは朔と蓮水の二人だけだ。



「はー…永季、一旦引こ」

「はいはい」



は?この状況で逃げんの?

朔はいつもそうだ。

自分は後ろに隠れて、不利になったら逃げる。



「総長のくせに、仲間やられてのこのこ逃げんの?」

「勝てない戦いはしない」



蓮水がパチンと指を鳴らすと、瞬く間にあたり一面が濃密な白い煙に包み込まれた。


こいつの能力は確か、──“幻覚の景色を見せる能力”。

まずい、これじゃ逃げられる…!



「またね、くーちゃん」




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