【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ



捕まえようにも奴らの姿は完全に消えており、視界を塞いでいた煙が晴れた時には、もうどこにも影すら残っていなかった。

倒れていたはずのBSの連中すら、跡形もなく消え去っている。


さっきまでの激しい喧騒が嘘だったかのように、あたりはしんと静まり返っていた。


俺はバッと後ろを振り返り、胡桃が無事でいる姿を確認する。

次の瞬間、居ても立ってもいられなくなり、駆け寄った勢いのまま胡桃を力いっぱい強く抱きしめた。



「…胡桃!」

『わっ…叶兎くん!』



逃げられた悔しさよりも、胡桃が今こうして自分の腕の中に無事でいる安心感の方が、圧倒的に勝っていた。


朔にまた逃げられたのは胸糞悪いが、追いかける術もない。

一旦、BSのことは後で考えることにしよう。



「無事で…よかった…」



文化祭の途中、秋斗から“胡桃がBSに連れ去られた”と連絡が入った時は、本気で生きた心地がしなかった。

真っ先に追いかけるつもりだったのに、そのタイミングを見計らったかのように反対方向から朔たちが学園内へ侵入してきて……。


学園を守る生徒会長という立場上、流石に見て見ぬ振りをして飛び出すわけにはいかなかった。



でも、奴らは本格的に攻撃してくるわけでもなく、ただ俺を足止めしているだけだと気づいた時には、もう遅かった。


今まで誰か一人を特別に好きになることなんてなかったから、こんなに心が乱れて不安になるなんて知らなかった。



…俺に弱点なんて、なかった筈なのに。





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