総長は、甘くて危険な吸血鬼
「お前ら、俺らもいること忘れてないか?」
『…!!!』
凪の冷ややかな声に、胡桃が途端に顔を真っ赤にした。
慌てて俺から離れようと、両手でぐいぐいと胸を押してくる。けれど、逃がすつもりは一ミリもない。
腰に回していた腕に力を込めて、彼女をしっかりと抱き留めた。
俺はずっと凪達がいること分かっててやってたので別に気にしてないし。
それに、周りの視線を忘れるくらい俺に会えたことを嬉しいと思ってくれたのなら……その気持ちが、たまらなく愛おしかった。
『ちょ、なんで力入れるのっ』
「んー、胡桃の反応が面白いから」
『もー離して!』
「やだ」
膨れっ面で怒る顔も可愛い。
……でも、この姿をいつまでも他の人に見せてるのは癪に障るので、渋々腕の力を緩めて胡桃を解放した。
「…そういえば、天音は?昼ぐらいからずっといないんだけど」
春流が疑問を口にした途端、空気が張りつめた。
今まで黙っていた秋斗が口を開こうとし、言葉を飲み込む。
そして胡桃もまた、視線を逸らす。
どこか後ろめたいように。
……これは、何か知ってるな。