総長は、甘くて危険な吸血鬼
俺も天音の違和感には気づいていた。
定期的に真夜中に1人でどこか出かけていくし、
洗濯物籠の中に不自然に汚れた服が置いてあった事もある。
明らかに、何か隠していた。
けど、初めて出会った時から天音には何か秘密がある気がしていたし、それを無理に踏み込むのは違うと思って追及しなかった。
「……胡桃を攫ったのは、天音だ」
そして秋斗の口から出たその言葉、
正直信じたくなかった。
天音が………
「は…?何で天音が胡桃を攫う必要がある?」
言葉が出なくて迷っていると俺よりも先に凪が口を開いた。
当然の疑問だ、天音が胡桃を攫う理由って…?
「…あいつは、BSのスパイだ。もうここには戻ってこない」
淡々と告げられる言葉に、胸の奥が冷えていく。
…こんなことになるなら、何を隠していたのか天音にちゃんと問い詰めるべきだった。
でも、この可能性を全く考えていなかった訳ではないので、思ったより冷静に受け止めている自分がいる。