【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
俺だって、天音の違和感には前から気づいていた。
定期的に真夜中一人でどこかへ出かけていったり、洗濯カゴの中に不自然に汚れた服が置かれていたこともあったし。
明らかに、白々しい何かを隠していた。
でも、初めて出会った時から天音には何か隠し事がある気がしていたし、そこに無理に土足で踏み込むのは違うと思って追及しなかった。
「……胡桃を攫ったのは、天音だ」
そして、秋斗の口から重々しく発せられたその言葉。
……正直、信じたくなかった。
天音が……あの天音が……。
「は…?何で天音が胡桃を攫う必要があるんだ?」
言葉が出なくて迷っていると、俺よりも先に凪が口を開いた。
当然の疑問だ、天音が胡桃を攫う理由って…?
「…あいつは、BSのスパイだ。……もうここには戻ってこない」
淡々と告げられる残酷な現実に、胸の奥がスーッと冷えていくのを感じた。
…こんなことになるなら、何を隠していたのか天音にちゃんと問い詰めるべきだった。
でも、思った以上に冷静に事実を受け止めている自分がいた。