総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ



【side胡桃】



「今使える部屋ここしかなくて悪いんだけど、俺がいつも使ってる部屋で良ければ好きに使って良いから。…疲れたと思うし今日はゆっくり休んで」


アジトに着くと、叶兎くんに案内されたのは初めてここに来た時と同じ部屋だった。


けれど今度は「叶兎くんの部屋」だとはっきり分かってしまったから、胸の鼓動が一気に早まる。

ハンガーで壁沿いに特服や私服が掛けられていて、アジトの一室にすぎないのに、急に叶兎くんそのものに触れているような気がして落ち着かない。



「何かあったら、隣の客間にいるからすぐ呼んで」

『え?…待って!』


さも当たり前かのように部屋から出ようとするから、思い切り叶兎くんの腕を掴んで止めた。



『叶兎くんの部屋占領しちゃうのは申し訳ないよ!それなら私がそっちで…』

「バカ、女の子1人鍵の無い部屋で寝かせるわけないでしょ。ここは俺専用の部屋だから1番安全な部屋だよ」



そう言われると何も言い返せないので困る。


…でもこれはただの口実で、つい本音が勝手に口からこぼれた。



『…じゃあ、叶兎くんもここで寝たら良いよ』



ほんの少しでも、


いや……できるならずっと一緒にいたい。


そんなわがままを隠しきれず、視線を落として呟いた。




< 282 / 405 >

この作品をシェア

pagetop