【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ



【side胡桃】






「今使える部屋ここしかなくて悪いんだけど、俺がいつも使ってる部屋で良ければ好きに使って良いから。…疲れたと思うし今日はゆっくり休んで」



アジトに着くと、叶兎くんに案内されたのは、初めてこの場所に連れてこられた時と同じ部屋だった。



けれど今度は「叶兎くんの部屋」だとはっきり分かってしまったから、胸の鼓動が一気に早まる。

ハンガーで壁沿いに特服や私服が掛けられていて、アジトの一室にすぎないのに、急に叶兎くんそのものに触れているような気がして落ち着かない。



「何かあったら、隣の客間にいるからすぐ呼んで」

『え?…あ、待って!』



さも当たり前のような顔で部屋から出ていこうとするので、私は慌てて叶兎くんの服の袖をぎゅっと掴んで引き止めた。



『叶兎くんの部屋占領しちゃうのは申し訳ないよ!それなら私がそっちで…』

「バカ、女の子1人鍵の無い部屋で寝かせるわけないでしょ。ここは俺専用の部屋だから1番安全な部屋なんだよ」



そう真剣な顔で言われてしまうと、何も言い返せなくなってしまう。


……でも、そんなのただの口実で……。

叶兎くんと離れたくないという本音が、抑えきれずに口からぽろりとこぼれ落ちてしまった。



『…じゃあ、叶兎くんもここで寝たら良いよ』



ほんの少しでも、


いや……できるならずっと一緒にいたい。


そんな自分勝手なわがままを隠しきれず、私は赤くなる顔を隠すように視線を落として呟いた。




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