【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
「え」
もう一度出ていこうとした叶兎くんが、信じられないものを見るように振り返り、目を丸くしたまま固まっている。
わ、私そんな変なこと言ったかな…?
前にも寮の叶兎くんの部屋で寝たことあるし、別に同じ部屋にいる事に対して問題は無いと思うんだけど…。
『…た、ただ寝るだけだからね!?』
そう補足すると、叶兎くんは「そこじゃない!」と訴えた。
じゃあ何だと言うんだ。
「昨日のこと、忘れたわけじゃないよね?」
あ……。
そういえば、そんなこともあった。
忘れたわけじゃないけれど、完全に頭から抜け落ちていたとは言えない雰囲気に、私は黙り込む。
無事に帰ってきて叶兎くんに再会できたことが嬉しすぎて、「一緒にいたい」という気持ちが恐怖を完全に塗り替えてしまっていたのだ。
それに、対処法はもう九条くんが教えてくれた訳だし。
『わっ、ちょ、なにっ!?』
返事をためらっていた私を見て、叶兎くんはいきなり私の身体を軽々と抱き上げた。
お姫様抱っこの体勢になり、驚きで腕の中でもがいてみるけど、叶兎くんの腕の力には全く太刀打ちできない。
そのままスタスタと力強い足取りで歩き出し、視線の先にあるのは部屋の奥に置かれた大きなベッド。
えっ……ええ!?今、そういう流れだった……!?
本当に深い意味なんてなくて、ただ純粋に「側にいたい」という意味で言っただけなのに……っ!