総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
そのまま、ものすごい勢いで叶兎くんは駆けて行った。
背中が遠ざかるのを呆然と見送っていた私に、流風くんが苦笑混じりに声をかけてくる。
「ごめんね、邪魔しちゃって」
『えっ?いやむしろ助かったというか、…その、なんというか』
言葉を探す私の様子に、流風くんは軽く首を傾げる。
「まさか、嫌なことされた?あいつ強引なとこあるしな」
『あ、そういう意味じゃなくて!…私が…慣れてないだけで…』
私は何をペラペラと話しているんだ…と思いながら口籠もる。
さっきまでのことで、まだ少し顔が熱い。
「あー…叶兎に怒られそうだからこの話やめよう」
『?』
「そういう顔は叶兎の前だけにしとかないと、悪い男に捕まっちゃうよ」
そう言って、流風くんは人差し指で私のおでこを軽くコツンと突いた。
いたずらっぽい仕草なのに、不意を突かれた胸がまた大きく跳ねる。
ど、どんな顔…!?
『…というか!さっきBSの副総長が来たって…大丈夫なの?』
一向に治らない顔の熱をどうにかしようと、慌てて話題を変えた。
冷静に考えれば、今はこんなやりとりをしている場合ではないはずだ。
「叶兎が行ったから大丈夫だとは思うよ。他に人の気配はなかったし、流石に1人で敵のアジト攻めて来るほどバカじゃないっしょ」
副総長…蓮水さんが来たのは私がここにいるからなのかな。
けど、もしそうだとしたら……何でたった一人で?
正面から来るなんて、どう考えても不自然だ。