【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ


しばらく部屋の前で話していたら、下の奥から足音が聞こえてきて、叶兎くんが戻ってきた。

だけど、叶兎くんの後ろには生徒会のみんなが勢揃いしていて……その真ん中に囲まれるようにして歩いている人物を見て、私は思わず息を呑んだ。


え……嘘でしょ? なんで……蓮水さんが……!?

黒い特攻服を羽織ったBSの副総長・蓮水さん。



敵の幹部が、なぜか抵抗する様子もなく、静かにこちらへ歩いてくる。

一体どういう状況なのか理解できず、私はパニックになりそうだった。



「えーっと、まさか連れてくるとは思わなかったんだけど…」



ドアの近くにいた流風くんも、完全に予想外の展開だったらしく、信じられないものを見るように目を丸くして呆然としている。



「俺は反対した」



一歩下がった位置にいた桐葉くんが、腕を組んだまま不満を露わにした。

それでも叶兎くんは表情ひとつ変えず、すっと隣の部屋の扉を開ける。



「話がしたいらしい。今のこいつに敵意はない」

「話がしたいだけ…ってホントに信じられるのか?」

「ま、少しでも変な動きを見せたら俺が責任を持って潰すから」



淡々と放たれる言葉は冷たく鋭い刃のようだけど、叶兎くんに睨まれた蓮水さんはその圧に怯むこともなく「うわ、物騒」なんて軽口を返していた。


その無邪気さすら演技なのか、本心なのか……判断がつかない。

彼が私の前を通り過ぎる一瞬、視線が絡む。



「胡桃も来て」



叶兎くんに名を呼ばれて、確信する。


やはり、この人の目的は…私だ。


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