総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
「だろうな。だから、あんたの意見を聞きたい」
真正面から、射抜くような視線。
蓮水さんの眼差しは冗談や軽口の色を微塵も帯びておらず、ただ真剣さだけがそこにあった。
横に座る叶兎くんからも鋭い視線が突き刺さっていて、二方向からの圧に、胸の奥がぎゅっと縮み上がり、息が浅くなる。
「ちょっと、まさか手を貸すつもりじゃないよね?」
半ば呆れたような声で叶兎くんが言った。
それは私の心を見透かしたようでもあり、彼なりの必死な牽制でもあった。
確かにそうだ。敵組織の副総長に協力するなんて、常識で考えればありえない。ましてや私を狙ってきた相手だ。
『ここに引っ越してくる前、朔は…私の唯一の友達だったの。もし私が協力したら、前みたいな朔に戻る?』
あの頃の記憶は、私にとって確かに大事なものだった。
朔と笑って過ごした時間。あの柔らかい眼差し。
けど、今の朔と重ね合わせるにはあまりに距離がありすぎる。
「あいつの能力を抑えることが出来たら、な。方法は俺もわかんねぇ」
無策じゃん。
なんか策があるのかと思ってた、それは話が変わる。
期待した自分が馬鹿みたいに思えて内心でぼやきが漏れた。
『協力したい気持ちはあるけど、何も策がないならちょっと…』
私だって無謀じゃない。
敵地に丸腰で飛び込むほど、危機感がないわけじゃないよ。
「あんたの純混血の力があれば、きっと何か方法がある筈だ」
そんな無責任な言葉を投げてくる蓮水さんに、心の中で「適当すぎる」と毒づいた。
でも不思議と、その眼差しは信じられないほど真っ直ぐで。
本当に嘘を吐いているようには見えない。それが逆に、厄介だった。