【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
「だろうな。だから、あんたの意見を聞きたい」
真正面から、射抜くような視線。
蓮水さんの眼差しは冗談や軽口の色を微塵も帯びておらず、ただ真剣さだけがそこにあった。
横に座る叶兎くんからも鋭い視線が突き刺さっていて、二方向からの圧に、胸の奥がぎゅっと縮み上がり、息が浅くなる。
「……ちょっと。胡桃、まさか手を貸すつもりじゃないよね?」
半ば呆れたような、どこか焦ったような声で叶兎くんが囁いた。
私の甘い性格を見抜いているからこその質問であり、叶兎くんなりの必死な牽制でもあった。
確かに、叶兎くんの言う通りだ。
敵組織の副総長に協力するなんて、常識で考えればありえない。
ましてや、私を狙ってきた相手だ。
『ここに引っ越してくる前、朔は…私の唯一の友達だったの。…蓮水さん。もし私が協力したら、前みたいな朔に戻る?』
あの頃の記憶は、私にとって確かに大事なものだった。
朔と笑って過ごした時間。あの柔らかい眼差し。
けど、今の朔と重ね合わせるにはあまりに距離がありすぎる。
「あいつの能力を抑えることが出来たら、な。具体的な方法は俺もわかんねぇけど」
……って、無策じゃん!!
何か画期的な方法や策があるのかと期待していたのに、あまりの丸投げっぷりに思わずコケそうになった。
ちょっと期待した自分がバカみたいに思えてきて、内心で盛大に毒づいてしまう。
『…協力したい気持ちはあるけど、何も策がないならちょっと…』
私だって無謀じゃない。
敵地に丸腰で飛び込むほど、危機感がないわけじゃないよ。
「あんたの純混血の力があれば、きっと何か方法がある筈だ」
そんな無責任な言葉をさらっと投げてくる蓮水さんに、心の中で「適当すぎるでしょ!」とツッコミを入れた。
それでも不思議なことに、蓮水さんの眼差しは信じられないほど真直ぐで澄んでいた。
本当に嘘をついているようには見えないし、私を信じているようで。
……それが逆に、ものすごく厄介だった。